犯罪率の高いラテンアメリカの一国に住んでいたとき、何回か強盗にあったり、スリにあったりしたのですが、一番怖かった思い出は『バスルームの電球が割れたとき』でした。
渡航して間もない、ある日曜日。
ステイ先の家族は教会に出かけて、誰もいませんでした。
静かなリビングでひとりテレビを観ていた私。
そこに突然、バスルームの方から”パリーン”とガラスが割れたような大きな音がしました。
殺人件数が日本の60倍ともいわれるラテンアメリカです。
毎日毎日新聞の一面は死体の写真。
私は最悪のシチュエーションを想像しました。
【強盗!?】
【やばい。殺される!?】
心臓はバクバクです。
とはいえ、どうしたらいいかわからない。
泣きそうになりながら、しばらく気配をうかがって【よし!】と勇気を出して猛ダッシュ。
走って家を出て、その日は人通りの多い中心部のカフェで一日を過ごしました。
ところが、夕方、家に戻ってみると、ステイ先の家族が何事もなかったかのように過ごしています。
まだまだ知っている単語くらいしか拾えない、片言のスペイン語でやりとりしたところによると「バスルームの電球が割れていた」とのこと。
私が想像したような出来事が何もなかったとわかったとき、どれだけほっとしたことか。
この事件のあとに、本物の強盗やスリにもあったのですが、この時ほどドキドキしたことはありません。
昔話の「ふるやのもり」みたい。
世界中で何が一番怖いかって自分の想像力ほど怖いものはありません。